課題:道路(街路を含む)行政に係る国、都道府県、市町村の権限配分と建設等の手続きについて、現状分析と問題点の解明を行う

 

目次:1.道路行政に係る権限配分・建設等の手続きについて

1.1 道路の種類

1.2 道路の管理

1.3 国土交通大臣の地方への関与

1.4 道路交通法における道路管理者の権限配分

1.5 都市計画法における街路建設等の手続き

1.6 道路行政の課題

 

1.道路法における道路行政に係る権限配分・建設等の手続きについて

1.1 道路の種類

道路法上の道路とは、一般交通の用に供する道と定義され、道路と一体となり、その効用を全うする施設又は工作物及び道路の附属物で当該道路に附属して設けられているものを含むものとされ(道路法2条)、高速自動車国道・一般国道・都道府県道・市町村道の4種類に区別される(道路法3条)。

高速自動車国道とは、自動車の高速交通の用に供する道路で、全国的な自動車交通網の枢要部分を構成し、かつ、政治・経済・文化上特に重要な地域を連絡し、その他国の利害に特に重大な関係を有するもので、政令で指定されたものである(高速自動車国道法4条)。路線指定、整備計画、管理、保全等については、高速自動車国道法が定めるが、同法に特別な定めがない場合は、道路法が適用される(道路法3条の2)。

一般国道とは、高速自動車国道と合わせて全国的な幹線道路網を構成し、かつ、道路法5条に規定する一定の要件に該当する道路で、政令でその路線を指定したものである。

都道府県道とは、地方的な幹線道路を構成し、かつ、道路法7条の要件に該当する道路で、都道府県知事がその路線を認定したものである。

市町村道とは、市町村の区域内に存ずる道路で、市町村長がその路線を認定したものである(道路法8条)。

 

1.2 道路の管理

高速自動車国道の新設、改築、維持、修繕、災害復旧事業その他の管理は、国土交通大臣が行うこととされている(高速自動車国道法6条)。国道(一般国道を「国道」という)の管理のうち、新設・改築は、基本的に国土交通大臣が行うが、工事の規模が小であるものや、その他政令で定める特別の事情により都道府県がその工事を施行することが適当であるものについては、その工事に係る路線の部分の存する都道府県が行うこととされている(道路法12条)。維持等は、政令で指定する区間(以下「指定区間」という)内は国土交通大臣が行い、その他の部分については、都道府県がその路線に該当する都道府県の区域内に存する部分について行うこととされている(道路法13条の1)。都道府県道の管理は、その路線を有する都道府県が行い(道路法15条)、市町村道の管理は、その路線の存する市町村が行うこととされている(道路法16条)。

道路法には上記における原則の他、例外についても規定されている。国土交通大臣は、指定区間内の国道の維持等を、当該部分の存する都道府県等が行うこととすることができるとされている(道路法13条の2)。そして国土交通大臣は、指定区間外の災害復旧に関する工事において、都道府県に代わって、高度な技術が必要な工事や、都道府県の境界に係る場合は、予めその旨を該当都道府県に通知すれば、自ら指定区間外の災害復旧に関する工事を行うことが出来るとされている(道路法13条の3)。

また、以上の道路管理者は、道路に工作物(電柱、公衆電話等)、物件(水管、ガス管等)、施設(鉄道・地下街・露店等)を設け、継続して道路を使用しようとする道路の占用に関しての許可権を持つとされている(道路法32条)。

 

1.3 国土交通大臣の地方への関与

@都道府県道の認定・変更・廃止については、都道府県知事は、国土交通大臣に協議しなければならないとされている(道路法74条)。

A国道の新設・改築については、指定区間外の国道を管理する都道府県等は、国土交通大臣の認可が必要とされている(道路法74条の2)。

B国土交通大臣は、道路構造の保全や、交通の危険を防止するため特に必要があると認められる場合には、当該指定区間外の国道を管理する都道府県等に対して、その処分の取消し、変更その他必要な処分又はその工事の中止、変更、施行若しくは道路の維持のため必要な措置を指示できるとされている(道路法75条の1)。

C都道府県道・指定市の市道・市町村道に、必要な処分等の指示や、処分等に違反した場合の更なる処分の要求といった措置が可能であるとされる(道路法75条の2、道路法75条の3)。

D都道府県知事は国土交通大臣に、道路整備計画や工事施工の実績等を報告しなければならないとされている(道路法76条)。

E国土交通大臣は道路に関する必要な調査をその職員、当該道路を有する地方公共団体の長若しくはその命じた職員が行う事とすることができるとされている。(道路法77条)。

 以上のように、国土交通大臣には地方への関与に関する権限が広い範囲に及んでおり、地方分権と呼ばれる時代に現状の法整備でよいのか、国民の立場で検証をする必要があると思われる。

  

 1.4 道路交通法における道路管理者の権限配分

 道路管理については、以上に述べた道路法の他、道路交通法が適応される。道路交通法は、道路の使用関係から生じる社会公共の秩序に対する障害を除去することを目的とする。

道路交通法では、通行のルール・制限、信号機・道路標識・道路標示の設置、車両の速度規制・停車や駐車の方法、乗車・積載・牽引の制限、道路使用の許可、工作物等に関する措置等が規定されている。

このように道路交通行政は、<1.3>で述べた国土交通省、都道府県、市町村の他、道路交通上の定めから国家公安委員会(警察庁)、都道府県公安委員会(都道府県警察)が所管している。それぞれが細かく役割分担をしているため、国民にとってわかりにくい構造になっており、縦割り行政になってしまう危険性がある。

 道路法の道路管理権と道路交通法の交通警察権との間には相違があるが、両者は基本的には、相互連携、相互協力し国民の理解を深めなくてはならない。そのような中で、道路法と道路交通法における調整すべき事項として次のことがある。

  

調整事項

道路法

道路交通法

道路占用許可と使用許可とが重複する場合における、道路管理者と警察署長との協議と申請書の相互経由提出

32条4

32条5

78条2、

79条

道路管理者の特例(道路の維持等を行う際の警察署長への協議)

 

80条1

道路標識、区画線、道路様式や設置に関する調整

45条1

45条2

4条5

 

以上のような調整すべき事項があるが、実際にどのように運用されているのか検証を行う必要があると思われる。

 

1.5 都市計画法における街路建設等の手続き

街路とは、一般的に町中の道であり、都市計画道路と呼ばれる。建設の手続きに関しては、都市計画区域において道路施設について必要であると考えられた場合、都市計画に定めることが出来るとされている(都市計画法11条)。道路区域とされた場合、建物の建築については、国土交通省令に定めるところにより、都道府県知事の許可が必要になるとされている(都市計画法53条)。

次に、住民の参加に関する手続きについては以下のようになっている。まず、都市計画案を作成する場合、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために、必要な措置を講ずることが認められている(都市計画法16条)。また住民は、縦覧期間満了の日までに、縦覧された都市計画の案について、都道府県の作成に係るものは都道府県に、市町村の作成に係るものは市町村に、意見書を提出することができる(都市計画法17条)。その後、都市計画審議会において計画案についての議を経て、都市計画が決定される(都市計画法18条、都市計画法19条)。

住民の参加について以上のように定められているが、まだ不十分な点がある。例えば、国土交通大臣は、国の利害に重大な関係がある事項に関し必要があると認めるときは、都道府県と、都道府県知事を通じて市町村に対し、都市計画区域の指定又は都市計画の決定若しくは変更のため必要な措置をとるべきことを指示できるとされている(都市計画法24条)。また、国の行政機関の長は、その所管に係る事項で国の利害に重大な関係があるものに関し、指示をすべきことを国土交通大臣に要請することができるとされている(都市計画法24条の2)。以上のことから、住民が都市計画に参画していく中で、中央の権限が広い範囲に及んでいることがわかる。

都市計画道路の整備は、広域的なネットワーク(交通ネットワーク・防災ネットワーク等)の形成とともに、地域のまちづくりにも密接に関係する。このため、都市全体における広域的観点と地元住民の意向を踏まえた地域のまちづくりの観点を踏まえて、路線ごとに道路建設等の必要性を検証する必要がある。地域の実情にあったまちづくりを、地域の住民が主体的に取り組むことができるように、まちづくりに関する業務の市町村への権限委譲が課題である。また、高齢者の増加や住民の意識の多様化への対応等、道路の利用者の視点に立ち、その機能が有効に活用されるように、質の高い道路整備を推進する必要があると思われる。

 

1.6      道路行政の課題

現状では、国土交通大臣が広い範囲で権限を持ち、都道府県道や市町村道等の建設や維持等に関与していくことが可能である。また、道路管理者の権限配分が複雑となっており、縦割り行政になってしまう危険性がある。平成15年度以降の5箇年間を計画期間とする社会資本整備重点計画の基本理念には、「地方分権の徹底、地域特性への配慮」とある。公共事業の一つである道路行政に進めていくためには、国民の理解と協力が重要であり、その理念を実践していく必要がある。その実践のためには、国民からみて公正、透明な意思決定が行われる仕組みが不可欠となる。地方分権とまちづくりという観点から、住民参画の手法と道路整備のあり方を検討していくことが課題であると思われる。地方分権とともに、住民参加の維持や管理、計画策定段階からの住民参画について、先進事例を分析し、住民満足度の高い事業を推進するためのシステムについて、今後研究を進めていく上で考察していきたい。